1本脚跳躍ロボット

2006年9月、岡山大学で開かれた日本ロボット学会学術講演会で「1脚ロボットによる跳躍動作の実現」と題する研究発表が、但馬氏よりなされた。そのセッションは、但馬氏の発表が近づくにつれ聴衆が増え出し、発表が始まる頃には、部屋の最後部は立ち見で一杯。通路にしゃがみこむ人もあり、大入満員、廊下にまで人があふれていた。それほど多くのロボット研究者が、トヨタのロボット研究に注目していたのだ。

実は、1脚ロボットの存在が公に出されたのはこの時が初めてではない。1年前の2005年12月、東京の国際展示場で開催された国際ロボット展のトヨタ自動車専務取締役井川氏による特別講演の中で、終了間際にほんの少しだけビデオで紹介されたのだった。その後、昨年の9月までほとんど情報は無く、学会開催の直前に日本経済新聞に記事が掲載されて一般に知られることとなり、昨年9月の講演で技術的な詳細が初めて明かされたのだった。その後、10月に北京で開催された世界的なロボット国際会議「IROS 2006(IEEE/RSJ International Conference on Intelliugent Robots and System)でも発表されたそうだ。そんな1本脚跳躍ロボットについて、まずは開発の経緯からお話を伺った。

1本脚のロボットを作ったわけ

「“2足歩行による移動”のひとつの鍵に、跳躍があるだろうと思ったことが始まりでした。段差を飛び越えたり、溝を飛び越えたりもできますし。歩行だけではなく、そこからもう一つ先に行こうとした場合、空中相(両足が接地していない状態)を含むような移動形態が必要だろうと考え、空中相の安定が保てる技術を開発しようと思ったわけです。空中相を持つということで、モーターパワーなどの制約もあるので、まずは一番シンプルな形、つまり1本脚のものを要素技術的に試してみようと考えました」(但馬)。

2脚歩行ロボットに、もっと高い機動力を持たせて移動させる。つまり、走行させたり、障害を飛び越え回避させたりするためには、安定して連続的に跳躍できる必要があるということだ。しかし、人間が1本脚でケンケンするのをイメージすると、片足でバランスを取るのは難しい。それをロボットでやるにはバランスの制御が大変だったのではないか? 2本脚でやったほうが安定してできるのではないか?と思ってしまうのだが。

「空中相での動作を作り出す仕組み自体は、1本でも2本でも、あるはそれより多くても、ほぼ同じであると考えられるんです。1本脚で作ると、極端に言えば重量が半分になります。現時点ではロボットの重量の大部分をモーターが占めるので、脚の本数の決定は、重量という点で大きな問題です。重いよりは軽い方が良いだろうということで1本脚を選びました。やってみると、思うほど難しいものではありませんでした」(但馬)。

なるほど。まずはシンプルが一番ということだ。よくよく考えると、人間のケンケンは重心も大きく動かさねばならないし、上げた片足のバランスも取らねばならず、複雑なバランス制御が必要となることに気がついた。

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